監修
東京大学医学部附属病院
小児科学教室 教授
加藤元博 先生
医療関係者用
監修
東京大学医学部附属病院
小児科学教室 教授
加藤元博 先生
医療関係者用
がんは遺伝子の異常が原因であることが知られています。
がんは遺伝子の異常が原因であることが知られています。
近年、固形がんの遺伝子異常を網羅的に解析する遺伝子パネル検査は日本でも保険適用となりましたが、血液がんは対象ではありませんでした。
新しい血液がんの遺伝子パネル検査「ヘムサイト」の登場により、血液がんの遺伝子パネル検査に求められる、遺伝子異常に基づいた『診断』・『治療法選択』・『予後予測』に活用できることが期待されています。
このホームページでは、血液がんにおける遺伝子パネル検査を受けることを検討される方に向けて作成しています。
皆様へ、がん遺伝子パネル検査の理解と、最適なゲノム医療が届くことを願っています。
血液の細胞は、骨髄中の造血幹細胞から分化・増殖を繰り返して、血中の赤血球・白血球、血小板などの細胞に成熟します。
血液がんは「造血器腫瘍」とも呼ばれ、血液細胞の遺伝子に異常が生じることで、血液細胞ががん化して異常に増加する病気です。
血液がんはがん化した血液細胞の種類によって、大きく骨髄系、リンパ系に分けることができ、主に下記の図のような病気があります。
増加する血液細胞の種類[未熟な細胞(前駆細胞)、成熟した血球]や場所[骨髄、血液、組織]、遺伝子異常の種類などから、血液がんはさまざまな分類がされており、症状も種類によって異なります。
血液がんの種類により治療方針や治療法が異なるため、検査で血液細胞の見た目や遺伝子異常を調べ、正確に診断することが重要です。
がんの原因となる遺伝子の異常に基づいた治療のことです。
この遺伝子の異常を調べる方法が「がん遺伝子パネル検査」で、1回の検査で何百種類もの遺伝子を調べることができます。
現在固形がんにおいて保険診療で行われるがん遺伝子パネル検査は、①標準治療がない固形がん患者さん、②局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了した患者さんを対象に主に治療薬の検索を目的に使用されています。
一方、血液がんの遺伝子パネル検査は、固形がんとは対象となる遺伝子の種類だけでなく、その活用できる可能性も異なります。
日本血液学会は、「造血器腫瘍に対する遺伝子パネル検査は、次の3つの観点における臨床的有用性を踏まえて活用されるべきである。」と提唱しています。
血液がんの治療では、がん遺伝子パネル検査をこれらの目的に活用できる可能性が高いことがわかってきました。
1診断
血液がんでは、病気の分類を、見つかった遺伝子の異常を基に進めます。
また近年、血液がんは、遺伝子異常により詳細に分類することが治療方針の決定に重要となります※1。
2治療法選択
血液がんも固形がんと同様に、遺伝子の異常や変化に基づいた「治療薬の選択」や、「薬の効果の判定」などにも活用されています。
3予後予測
血液がんでは、遺伝子の異常の有無やその種類が予後(病気や治療の経過の見通し)や治療に対する反応性の予測に活用されます※2。さらに造血幹細胞移植の治療適応を決定する臨床的判断(評価や治療を選択すること)にも有用です。
コラム
「 血液がんに特徴的な造血幹細胞移植時のドナー選択 」
血液がんの治療法のひとつに「造血幹細胞移植」があります。
造血幹細胞移植は、健康な造血幹細胞を移植し、正常な血液の機能を取り戻すことを目的として行う治療です。しかしながら移植後に遺伝子パネル検査を実施することで、患者さん本人のみならず、患者さん以外の細胞提供者(ドナー)の遺伝子異常が検出されることがあります。
特に血縁者のドナー細胞では、患者さんと同じバリアント(生まれもった遺伝子の違い)を共有している可能性があります。非血縁ドナーも含め、ドナーの細胞が保有している病的な変異などに由来する「ドナー由来白血病」も報告されています。
遺伝子パネル検査が導入されることで、新たなドナーの選択も検討されるかもしれません。
がん遺伝子パネル検査は、1回の検査で数百個の遺伝子を調べることで、がんの遺伝子異常を幅広く網羅的に検出します。
ヘムサイトは血液がんに特異的な遺伝子異常を検出する遺伝子パネル検査です。
血液がんでは、さまざまな遺伝子異常が知られており、検査の対象となる遺伝子数は数百種類を超えます。また近年では検出された遺伝子異常を診断・治療法選択・予後予測に活用することが期待されています(3血液がんのゲノム医療とは?参照)。
従来の染色体・遺伝子検査では染色体レベルでの変化や特定の遺伝子異常を個々に調べます。
遺伝子パネル検査では数百種類の遺伝子を同時に調べます。がんに特徴的な遺伝子異常を網羅的に一度に検出することで、診断・治療法選択・予後予測に活用することが可能となります。
ただし遺伝子パネル検査は従来の検査に置き換わるものでなく、お互いが補完し合うものとされています。
材料採取から結果報告の流れは次のとおりです。
※ エキスパートパネルとは、がんや遺伝子の専門家で構成される会議です。遺伝子パネル検査の結果を専門家の立場から検討します。
1すべての方に適切な治療法に結びつくわけではありません。
がん遺伝子パネル検査を受診されたすべての方に遺伝子異常が見つかるわけではありません。遺伝子異常が見つかっても、その方のがんに効果のある薬剤が必ず見つかるとは限りません。
2『遺伝性のがん』の素因が見つかることがあります。
がん遺伝子パネル検査を実施した場合に、ご本人のみならず、ご家族や血縁の方にも関係がある遺伝的素因(がんになりやすさ)や背景にある血液疾患が見つかることがあります。
このような遺伝的素因は、患者さんご本人が希望された場合にのみ、報告されます。
必ず、検査実施前に主治医に報告希望の有無をお伝えください。
3材料の品質等により、解析できない場合があります。
がん遺伝子パネル検査は、受診者の検体から核酸(DNA/RNA)を抽出して実施します。その際に十分な検体量が取れなかったり、材料の品質が悪かった場合に、解析がうまく実施できない場合があります。
監修
東京大学医学部附属病院
小児科学教室 教授
加藤元博 先生
HM2504003 2025年4月改訂